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東京高等裁判所 昭和34年(く)90号 決定

少年 M(昭一五・一〇・二六生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、本件少年に対する頭書保護事件につき横浜家庭裁判所がなした前記中等少年院送致の決定は不服につき本件抗告に及ぶというのである。

よつて調査するに、本件少年に対する少年保護事件記録(横浜家庭裁判所昭和三四年少第二三六号および同第三六八〇号)および少年調査記録によると、少年は昭和二十八年四月横浜市立○○○中学校に入学したが同校二年生の時学習意欲を欠き、総授業日数二百四十七日中欠席日数は実に百八十二日にも達し学課の成績も極めて悪かつたため、同三十年三月に同校を除籍されるに至つたものであるが、その後は就学もせず、家にあつて家業の船大工を手伝ううち不良の徒輩と交友を結び、京浜急行新子安駅附近に屯する愚連隊の一員となつて夜遊び盛場徘徊など不健全な生活を送り、遂に本件非行を相ついで行うようになつたものである。ところで少年の性格および行動傾向を見るに少年はその情意面に強度の偏倚が認められ、気分安定性に欠け、粗暴であつて独善的攻撃的傾向が強く、また自主性に乏しく、他人の言動に動かされ環境に支配され易い傾向があり、さらにまた倫理感が稀薄であつて本件非行についても反省のあとが見受けられぬ憾があるところ、少年の実父母は、少年の指導、教育に無関心であり、放任的であつてその育成保護を期待し得ない状況にあることが認められる。

以上諸般の事情および本件非行の罪質、態度等を総合して考えると、少年の犯罪的傾向は相当に顕著なものがあるといえるのであつて、少年を健全に保護育成するためにはこの際施設に収容し、矯正教育を施すのが適切妥当な措置であると思料される。それゆえ少年を中等少年院に送致する旨の決定をなした原裁判所の処分は相当であり、また本件記録を精査しても原裁判所の決定には何等法令の違反および事実の誤認はないから本件抗告はその理由がない。

よつて少年法第三十三条第一項後段、少年審判規則第五十条により本件抗告を棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 岩田誠 判事 八田卯一郎 判事 司波実)

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